東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「…去年起きたアメリカでのウォール街での世界恐慌。都内でも倒産する会社が相次いでおります」



「それは俺も理解している」


街には失業者が溢れ、大卒でも就職できない状態だった。


「…佐助様の会社が倒産してもおかしくはない状況です」



「佐助は姿を消し…莫大な借金を中尊寺元財相が肩代わりするかもしれない」


「…柾史様は俺に何を調べろと…借金の額ですか?」



「…あぁ…ついでに佐助の行方も…」


「征史様の頼みでも…それは訊けません。俺も忙しい身」



「…無理を言って済まなかった…」




樋川は視力が弱く、眼鏡を掛けていた。

少しずれた眼鏡を指先で押し上げて、扉に向かって歩いて行った。



「征史様は椿様との婚約の消極的だと訊きましたが…椿様の事をお気に召したようですね」



「はぁ?違う!!俺は唯、椿に頼まれて…」


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