東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「失礼します…」



樋川は俺の様子を見てニヤリと笑い、出て行った。



「違うと言っておろうが…たくっ」



「何…樋川と内緒話か?」


屋敷に居候している成宮が興味津々に入って来た。



「別に…」




「…婚約者の椿さんの名前が訊こえたが…」




「何だ盗み聞きしていたのか…無粋だぞ…成宮」




「…それはすまないな」



成宮は単調な声で謝罪の言葉を口にする。

ヤツに反省の色など全く見えない。




< 47 / 300 >

この作品をシェア

pagetop