東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
誰かが扉を叩いた。



「椿様の準備は整っております。お入りくださいませ…御堂中尉」


「!!?」


私は富士子さんが紡いだ名前に目が真珠のように円くなった。



「失礼致す…」


低い響く少し甘い声。



御堂中尉が扉を開けて、ゆっくりとした足取りで部屋に入って来た。


清潔に整えられた黒髪。

髪と同じの黒い色だけど、髪色以上に漆黒の闇の光を宿った瞳。


上品な顔立ちに長身に似合う正装の軍服姿。



初めて見る…将来の伴侶に目が離せなかった。



「貴様が…俺の伴侶となる椿お嬢様か…」



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