東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
俺に従順な態度だった清史が指図するなんて…



清史も椿に惚れてるのか?



俺は鏡台の前で結った髪をおろし櫛を通す椿を見つめる。



「椿…お前…演劇に興味あるか?」



「え、あ…はい」


「そうか…来月…帝国劇場にて上演される『オペラ座の怪』を観に行こう」


「はい」



昨日の夜の件で、椿は俺に心を石のように閉ざしたかと思ったが…


「征史さんは演劇に好きなんですか?」



「…いや…成宮が…俺は…歌舞伎の方が…」



椿は口許から零れる微笑が俺を何故か…追い詰める。



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