嘘と微熱と甘い罠
「はぁ…」
朝イチからの打ち合わせやら会議やらで手が空かず。
笠原さんへメールの返信もできてない。
さっきの会議には笠原さんもいた。
向かい合わせに座っていたせいか。
会議中に何度か目が合ったけど。
ふいっ、と顔を逸らされた。
…あれは絶対怒ってる…。
「…どうしようかな…」
怒ってるのはわかってるけど。
メールの返信がなかったくらいであんなに怒らなくてもよくない?
昨夜だって、そんなに急用なら電話してくれればいいだけの話じゃない。
「…はぁぁぁぁぁ」
私はもうひとつため息を吐くと。
配られた資料を手元にまとめ、立ち上がった。
…その時。
「…天沢」
「…っ!?」
入り口から呼ばれた声に。
慌てて顔をあげた。