嘘と微熱と甘い罠
「…で?お前はなんでここに来たんだ?」
そんな表情の歪みもほんの一瞬。
少し乱れた襟元と表情を元通りにした笠原さんは。
さっきまでと同じように言葉を発する。
それを受けた相良は。
「課長に探してこいって言われたんですよ」と笠原さんに返してから。
私に視線を向けた。
「…ッ!?」
私に向けられた相良の目は。
明らかに怒りを含んでいた。
でも、悲しげにも見える。
「…天沢、戻るぞ」
「あ、うん…」
「つーわけで笠原さん。…天沢、返してもらいますから」
「うわっ…っ!?」
そう言った相良は。
ツカツカと私の側まで来ると、グイッと腕を引いた。
そして。
笠原さんには「失礼します」と軽く頭を下げると。
そのまま背中を向け、会議室を後にした。