嘘と微熱と甘い罠

「…あー、キスしてぇ…」

「…ッ!?」





自らを嘲るように呟きながらも。

まるで指先でキスをしているかように。

撫でたり、摘まんだり、押したりを繰り返しながら私の唇に触れている。

それは相良から与えられた刺激を思い出させるような。

甘く、焦れったく。

私の熱を少しずつ上げていく。





「…指先でもこれだけ欲情するんだから、唇で触れたりしたら…それだけイケるかも」





なぁんてな、と。

苦笑いを含ませた冗談混じりのセリフですら。

私の身体の奥を刺激する。

…そんなことされたら。

かけ算九九なんてやってられるわけない。

そんなこと言われたら。

思うことはただひとつ…。





「…相良」

「ん…?」

「キス…しよ…?」





小さく、小さく紡がれた言葉。

それは相良の耳にきちんと届いたらしく。

唇に触れている相良の指先がビクッと揺れ、動きが止まった。




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