嘘と微熱と甘い罠
アハハ、と小さく笑った笠原さんは。
そのまま言葉を続ける。
「俺は天沢が好きだって言ったから、俺も好きだよって言っただけ」
「…天沢のこと好きじゃねぇくせに」
「いや?天沢のことは好きだよ?ただし…後輩として、だけどな」
な、に…?なんなの…?
心臓がバクバクと音と動きを増していく。
笠原さんは何を言ってるの?
相良も何言ってるの?
力が抜けて座り込みそうになったとき。
追い討ちをかけるように笠原さんの言葉が耳に届いた。
「だいたい、俺は天沢につきあうなんて言ってない。飲みに行ったり、遊びに行ったりぐらい誰とでもするだろ」
ドキドキはドクンドクンに変わり。
バクバクと今にも口から出そうなくらいに心臓は忙しなく動く。
私が聞いているなんて微塵にも思っていないだろう。
笠原さんの乾いた笑い声の後、バンッと大きな音がした。