嘘と微熱と甘い罠
その大きな音に私の体はビクッと揺れた。
音だけでも驚いたのに、続いた相良の怒鳴り声にまた体が揺れた。
「つきあってねぇのに抱くのかよ!!」
「そんなもんなりゆきで…とかあるだろ?そんなもんだ」
「だったらキスマークなんかつけんじゃねぇ!!」
「俺のなんだからいいだろ?」
「俺の、なんだよ!?天沢はてめぇのもんなんかじゃねぇよ!!」
もう、止めて…止めてよ…。
笠原さんのおどけたような言葉が、相良の怒鳴り声が。
ザクザクと胸だけじゃない、全身に刺さる。
もう聞きたくないのに、耳を塞いでも2人の声は容赦なく私に降り注ぐ。
「…天沢がどんだけてめぇのこと好きか知ってんのか!?」
「知ってるよ。呼び出せば仕事も他の約束も蹴って俺のとこ来ちゃうぐらいだろ?」
「知っててなんでこんなことできるんだよ!!」
「…カワイイだろ?ご主人様に忠実なワンコって感じでさ」
…笠原さんは、どんな顔をしてこの言葉を言ったんだろう。