嘘と微熱と甘い罠

「結局、ダメ出しの話はできなかったな」





会計を済ませて出てきた笠原さんが苦笑いを見せた。





「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまです」

「今度はカウンターで寿司だな。相良の奢りで」

「平日昼間、回るところなら」

「アハハハハ」




サァァァ、と時折動く空気の流れが。

身体の熱さを冷ましていく。





アルコールに弱いわけじゃない。

かといって。

自分でどのくらい飲めるのか、なんて。

限界まで飲んだこともないからわからない。

…まぁ、人並みには飲めるってことだよね。

だから。

このままもう一軒…笠原さんともう少し一緒にいたいな、なんて考えていたんだけど。

その考えは。

辛くも笠原さんの言葉で破れ散った。





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