嘘と微熱と甘い罠
聞いたことのない相良の甘い声にセリフに。
腰が砕けそう。
加えて助手席側のドアと相良に挟まれて。
逃げたくても逃げられない。
「…冗談、だよね…?」
「…この状況でよくそんなこと言えるな」
私の問いに。
相良は眉間のシワを深めた。
…ホントはわかってる。
相良は本気だってこと。
それを証拠に。
相良は“男”の顔をして。
巻き付くような視線を飛ばしながら。
ゆっくり顔を近づけてくる。
そんな顔見せられたら。
もう…どうしていいかわからなくなるよ。
逸らしたいのに逸らせない視線。
逃げたいのに逃げられない身体。
相良が纏う香水の匂いが鼻を掠めた時。
「…ムカつく」
「な…ッ!?」
予想もしてなかった言葉を紡いだ唇は。
そのまま私の胸元に降りてきた。