最愛HONEY



「…んっ」


ふいに塞がれた唇。

開けたばかりの目に飛び込んできたのは、龍ちゃんのアップ。

うわぁ…
懲りずに頼んでみるもんだねぇ。

本当にしてもらえるとは思わなかった。


やっぱり、これだよね。


「……ぁっ」


目を閉じて。

さらにキスを深めようと、龍ちゃんのほうに手を伸ばした…のに。


「……よし。起きたな?」


パッと唇を放して、


「ほら。さっさと行くぞ。」


龍ちゃんは、私の腕を掴んで車から引き出した。


もう、終わり?


甘い雰囲気は?
キスの余韻は?


……うーっ。

中途半端に煽らないでほしいんだけど。


「……何?」


不満をこめて睨んでみたものの、素知らぬ顔で車から“私以外の”荷物を取り出す龍ちゃん。


「別に…。」


悔しいから、私も素っ気なく返して…

龍ちゃんの手から自分の荷物をひったくって、さっさと歩き出した。


「おい、ナオ?」


ふんっ。振り返ってやるもんか。

龍ちゃんを置いて、そのまま部屋まで走る…つもりだったのに。


「……心配しなくても、
“つづき”は家でしてやるよ。」



ぽつりと呟かれた一言に、うっかり引き返してしまった。


……意志、弱すぎ?


< 9 / 57 >

この作品をシェア

pagetop