唇が、覚えてるから
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実習は学校の授業の一環にすぎない。
不本意だけど、これ以上自分の我を通すことなんて許されるわけもなく。
中山さんとは必要以外の会話をすることはなくなった。
中山さんの息子さんには会えなかった。
結局、面会謝絶で部屋に立ち入ることすら出来なかったのだ。
そんな中、毎日会う祐樹の存在は、私の癒しだった。
もう諦めたかもしれないけど、一度は医療従事者を目指した人。
祐樹はいつも私の話を真剣に聞いてくれた。
私の今のつらい気持ちも。
『そっか。悔しいよな……』
祐樹の一言が、支えになった。
医者への道を諦めた理由は……もう、聞かないことにした。