唇が、覚えてるから
「そうそう!長谷川祐樹君て人、誰か知ってる!?」
しばらくまったり話していたころ。
思い出したように、希美が男の子全員にそんな話題を振った。
「え、ちょっとっ!」
驚いたのは私。
ここで祐樹の名前を出す!?
祐樹の"ゆ"の字も覚えてないと思えたほど、智久君とイイ感じに喋ってたのに突然何!?
忘れていたわけじゃないけど、まさかの祐樹の名前に、私の心臓は今日一番激しく動いた。
いないのにそれはルール違反だと、眉間にシワを寄せて視線を希美にぶつける。
騒いだら余計に目立つから、密かに。
それと反対に。
男の子たちはみんなピタッとお喋りをやめて、希美の方を向いた。
そして、互いに顔を見合わせる。
「ん……ま、まぁ……」
「……な」
不自然に言葉を濁す男の子達。