唇が、覚えてるから



「そうそう!長谷川祐樹君て人、誰か知ってる!?」


しばらくまったり話していたころ。

思い出したように、希美が男の子全員にそんな話題を振った。


「え、ちょっとっ!」


驚いたのは私。

ここで祐樹の名前を出す!?

祐樹の"ゆ"の字も覚えてないと思えたほど、智久君とイイ感じに喋ってたのに突然何!?

忘れていたわけじゃないけど、まさかの祐樹の名前に、私の心臓は今日一番激しく動いた。


いないのにそれはルール違反だと、眉間にシワを寄せて視線を希美にぶつける。

騒いだら余計に目立つから、密かに。


それと反対に。

男の子たちはみんなピタッとお喋りをやめて、希美の方を向いた。

そして、互いに顔を見合わせる。


「ん……ま、まぁ……」

「……な」


不自然に言葉を濁す男の子達。
< 122 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop