唇が、覚えてるから


ガタンゴトン。

電車を乗り継ぐたびに過疎化の進む車内。

時おりおばあちゃんが乗ってくるくらいで、乗客はほとんどいない。


この電車はすでに5本目。

これが地元につくまでの最後の電車。

地元へ近づくにつれて雨は弱くなり、長いトンネルを抜けたらすっかり雨は上がっていた。

一面田んぼ畑で、長く伸びた穂が風で綺麗になびいている。

なんだか、とっても落ち着く。


向かい合って座る私達。

窓から入り込む風が、祐樹の髪とシャツを優しく撫でる。

田園風景に、祐樹の横顔。

見惚れていると、祐樹がおかしなリポートをした。


「景色が変わってまいりました。ついに異国の地へ突入です」


まさに世界の車窓さながらだ。


「ねえ。バカにしてるでしょー」

「してないしてない」


絶対してるし、その顔。
< 138 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop