唇が、覚えてるから
ガタンゴトン。
電車を乗り継ぐたびに過疎化の進む車内。
時おりおばあちゃんが乗ってくるくらいで、乗客はほとんどいない。
この電車はすでに5本目。
これが地元につくまでの最後の電車。
地元へ近づくにつれて雨は弱くなり、長いトンネルを抜けたらすっかり雨は上がっていた。
一面田んぼ畑で、長く伸びた穂が風で綺麗になびいている。
なんだか、とっても落ち着く。
向かい合って座る私達。
窓から入り込む風が、祐樹の髪とシャツを優しく撫でる。
田園風景に、祐樹の横顔。
見惚れていると、祐樹がおかしなリポートをした。
「景色が変わってまいりました。ついに異国の地へ突入です」
まさに世界の車窓さながらだ。
「ねえ。バカにしてるでしょー」
「してないしてない」
絶対してるし、その顔。