唇が、覚えてるから
「……ゆう……き…」
だって、そんなこと言ってもらえるなんて思ってもなくて……。
いつも真面目なことをサラッと言う祐樹だけど、今日は涙が出そうになった。
「……ありがとう。
私も……色々悩んだりもしたけど、この町に来て本当に良かったって思える。ここに来なかったら、今の夢は見つかってなかっただろうから……」
きっとそう。
この町に住んで、人々の優しさに触れて、生まれた気持ちだから。
「琴羽がここへ来て良かったって思うことが、家族も一番嬉しいんじゃないか?」
「うん。それに、看護師になってこの町に帰ってくれば、いつか町の人にも恩返し出来る日が来ると思の」
「ああ。琴羽の本当にしたい看護、出来るといいな」
「でも……実習して分かったことも沢山ある。理想だけじゃ、看護は出来ないってことも。先輩の言うことも分かるようになってきた」