唇が、覚えてるから
「ほんと琴羽って……」
「なによー」
「ガキ」
振り返ると、唇を突き出しながらそんなことを言う祐樹がいた。
「ガキですってー!?」
ちょっと、それはないんじゃないの!?
手を腰に当てて、同じく口を尖らせてみる。
「ま、ここへ来てよかった。琴羽の人となりが十分分かったし」
「何が分かったってー?」
私が更に膨れると。
祐樹は笑い顔を一転させて、こっちに向き直った。
「琴羽のその明るいところも、前向きなところも、全部ここから生まれたんだろうなって思った。
家族に大事にされて、ここの人たちにも愛されて。それが分かっただけでも、ここへ来た価値はあるよ」
トクン。
前触れもなくそんなことを言うから、胸が高鳴った。