唇が、覚えてるから
「私だって信じられなかったよ!」
嘘だと信じたい中で、それを嘘だと思わせない要素。
───それは、真理の涙。
下唇を噛んだ真理の目からは、見たこともないような大粒の涙が零れていた。
「この世には、説明がつかないことも起こるかもしれない。だから琴羽の話も信じる。
でもね、琴羽が会ってた樟大附の長谷川祐樹は、交通事故で意識不明の重体なの!これが事実なんだよ!!」
とどめを刺されて。
「……っ。……ウソだっ。
……そんなのウソに決まってる!!!」
私がこの目で確かめるまで、誰の言葉も信じない。
絶対に信じないんだからっ……!!!!
「琴羽っ!」
「どこ行くのっ!待って!」
2人の制止に聞く耳も持たず、私は寮を飛び出した。