唇が、覚えてるから

祐樹はゆっくり頷いて


「ありがとな。それ、ずっとここんとこしまっとく」


自分の胸を指す。


覗かせた白い歯が、悪戯っぽくて。

祐樹だってまだ18歳の男の子なんだって思い知らされた。

もっともっとこの顔を見ていたいのに。


……切なくなる。


「それと、一つだけ約束して?」

「……」

「琴羽はいつでも笑ってて。琴羽が泣いてたら、俺心配で向こうでのんびり出来ねぇし」


ずるいよ。

そんなこと言われたら、私泣けないじゃん。


「俺の大好きな琴羽の笑顔で送ってもらえたら、俺、それだけで幸せ。

ね、約束───」

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