唇が、覚えてるから
第5章

雨が君を連れていく


気がついたら、寮のベッドの上だった。

自然の明るさに包まれた部屋に、今が朝なんだと知る。


「フラフラしながら帰ってきて、ここへ入るなり倒れちゃったんだよ……」


ベッド脇には、心配そうな真理の姿。

その奥の壁には、きちんと制服が掛けられていた。


「……」


ズキン…と、胸に痛みを覚える。

昨日のこと、夢じゃないんだ。


そして、唇にそっと指を乗せる。


まだ、残ってる気がした。

祐樹のぬくもりが……。


視線を落とした私に、


「……祐樹君のこと……?」


真理が心配そうに聞いてくる。


「………迷惑かけてごめんね」


真理だって毎日実習でへとへとなのに、すごく申し訳ない。
< 233 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop