唇が、覚えてるから

心臓マッサージを施そうとした医師に


「これ以上、体に負担はかけないでやってください」


祐樹のお父さんは、蘇生処置を望まなかった。



奇跡なんか、起きなかった。


……祐樹の心臓は

二度と動くことはなかった。





「祐樹の分まで、私、一生懸命生きるからね」


18歳までしか生きれなかった祐樹の悔いを。


「笑顔で、がんばるから……」


祐樹の望みを。


私が必ず守ると祐樹に誓う。



祐樹の最期の顔は、中山さんと同じ、穏やかなものだった。
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