唇が、覚えてるから

「……えっ……」

「そういう人間っぽいとこ」


祐樹はちょうど辿りついたベンチに腰掛けた。


滑るようにサラリと放った言葉に、いつもと違う空気を感じ戸惑う私。

うるさい心臓を抱えながら、隣に座る。


「実習生だからってオドオドすることもなければ媚びることもない。
一生懸命が伝わる。琴羽の仕事は」


……"一生懸命"

看護師を目指すうえで、忘れてはいけないと常に思っていることで。

その頑張りを、誰かに認めてもらえたのなんか初めてで。

それが祐樹で。


……たまらなく、胸の奥に熱いものが広がっていく。


「琴羽はどうして看護師目指したの?医者と結婚しようっていう玉の腰狙い?」

「ち、違うし!」


けれど、減らず口も健在。
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