唇が、覚えてるから
「ふんっ」
私はプイッと横を向いた。
本当にいつも一言余計なんだから。
そりゃあ。
実習生の中でも一番デキの悪い生徒かもしれないけど。
こんなんだって、たまには役に立つこともあるんだから……たぶん。
「この間聞いたぞ?廊下では走って転ぶし、仕事はトロイし、笑顔だけで持ってるって」
「嘘でしょ!?」
そんなことを言われ、顔面蒼白になる。
「ウソウソ。でもその顔。図星なんだな」
いたずらっぽく祐樹が笑った。
……っ。カマかけたの!?
「ちょっとぉぉぉっ!」
恥ずかしくてたまらない。
思わず手をあげようとしたそのとき。
「好きだよ」
切れ長の目が、優しく私を捉えた。