唇が、覚えてるから
貫けない信念
落ち込んでなんかいられなかった。
朝が来れば、私は実習生として患者さんたちと向き合わなくてはならない。
中途半端な気持ちじゃ務まらない。
私情を病棟に持ち込むなんて、私のプライドが許さない。
プライド……それは小指の先くらいのものだけど、どうしても譲れないもの。
そして今日。
更に私をどん底に突き落とすようなことが待っていた。
「五十嵐さん、なにもそこまで一生懸命になって中山さんの話に付き合うことなんてないのよ」
患者さん達の昼食が終わり、今日の実習も折り返しに入ったころ。
橋本さんが言った一言に、私の顔から笑顔が消えた。