ルーツ
幸せな夢想にふける裕未の前を何人もの人が通り過ぎる。



散歩する老人。
ロードワーク中のスポーツマン。
サボり中のサラリーマン。



皆思い思いに公園の穏やかな日を楽しんでいる。








そんな時、突然後ろから響く声



「こんにちわあ、いい天気ですねえ」





裕未が後ろを振り向くと、初老のサラリーマン風の男が立っている。
くたびれたスーツを着て、にこにこ笑うその男はなおも言葉を続ける。



「徹さん…でしたっけ？はじめまして、私は平野と申します」
徹はその男を険しい顔で睨みつける。



「なんの用だ？」
鋭い声で徹は言い放つ。





男はにやにやしながら、ポケットからピースを取り出すとマッチで火をつける。
深く肺まで煙を吸い込むと、男は徹を見据えてこう言った。



「今日はね、交渉に来たんですよ…徹さん」









裕未は穏やかな公園の風景がまるでガラガラと音を立てて崩れ落ちた様な気がした。










「また悪夢が始まる…」

裕未は震える声でつぶやいた。
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