ルーツ
一見人の良さそうな風体のその男。
だがその眼光は鋭く油断なくあたりを見回している。



吸っていたピースを丁寧に携帯用灰皿に入れると
男は再びしゃべり始めた。



「徹さんは、もう気がついていらっしゃると思うんですけど
かなり前からあなた方を監視させてもらっています。


そして多少なりの…揺さぶりって言っていいんでしょうかねえ
それも掛けさせてもらいました。



どうでしょう、徹さん。


あなたがだれにも危害を加えず、キーワードを教えてくれたら
あなたの身の安全は保証しましょう。


もしそれが嫌だというのなら…



うちとしては強硬に行かなきゃならん羽目になりますねえ」



くっくっく…

男はいやらしい笑いを浮かべる。



裕未は震えが止まらない。
青ざめながら早口で徹に問いかける。


「だ、誰なのこいつ?
キーワードってなんなのよ?


なぜ私たちが狙われなきゃならないの?」


徹はやさしい眼差しを裕未に向ける。


「裕未は…裕未は何の心配もしなくていいんだよ?


大丈夫、裕未は僕が守る」



徹は裕未を抱き寄せると
男に向かって静かに言葉を発した。
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