ルーツ
「いいんだ。裕未は何も知らなくて。
世の中にはね、知らない方が幸せなこともあるんだ。


頭がおかしい男につきまとわれているだけさ」




「いや!そんなの嫌!」




裕未は徹を遠ざけて叫ぶ。




「そんな、事実を覆い隠して何事もなく平穏に暮らしていくなんて
私にはできない!


そんな偽りの生活なんて…」



「黙れ!」



徹は突然声を荒げる。


徹に今まで怒鳴られたこともなかった裕未は
徹の突然の豹変に、驚いて黙りこんだ。



「じゃあ…じゃあ裕未はこの壁紙の下には何が隠れているか知りたいのか?
奴らが何をほしがっているのか知りたいのか?


違う!!


裕未…


裕未は自分がどんな人間なのか知りたいって言うのか!!
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