お父さんの彼女なんかに取られてたまるかっ!!(仮)


 下にいる真矢は、スマホを耳に当てながら校舎を見上げて私を探していた。

 バチッと目が合うなり――


『あ、いましたわ。三階の、坊主頭の彼の隣ですわよね? ヤッホー、んふふっ』


 だから、嬉しそうに手を振るなっ!


「で? 何しに来たのよ?」

『未来の娘と、一対一でお話をしに来たのよぉ』

「っ、未来の娘とか言うんじゃねぇーっ!!」


 カッとして怒鳴りつけると、関係のないカッシーがビクッと肩を震わせた。


「ビビったぁ……お前、さっきから誰と電話してんだぁ?」

「う、うっさい、ハゲッ!」

「ハゲじゃねぇし、坊主だし!」

「いいから、お前はとっとと窓を拭けっ!
 とにかく真矢! 私は話すことなんて、もうないからっ! どうぞ、お帰りください!」


 カッシーとお約束のやり取りをしてから、再び真矢との会話に戻った。


『ワタクシは話すことがありますの。そう簡単には帰れませんわぁ』

「簡単には帰れなくても、帰れっ!」

『というわけで、校門のところで待ってますわよ。あ。慌てなくてもよろしくってよ。
 では、またのちほどぉ』

「あ、ちょっと! 待たれても困るしっ……って、切ったし」


 なんて強引なっ……。人の訴えもまるで無視だしっ!

 再びベランダから下を覗き見ると、真矢は相変わらず嬉しそうに手を振っていた。

 くぅー……もう、こうなったら、じっくり話をしてやろうじゃない。

 女同士、一対一の勝負だっ!


 一方、隣の坊主頭の彼は――


「なぁなぁ、咲華。あのコ、ずっとこっちに向かって手を振ってるよな?
 ひょっとして……俺に? なーんてな! ダハハーッ!」

「たくっ……幸せなヤツだよねぇ、アンタは……」


 何も知らないでいるノーテンキなカッシーが、ものすごく羨ましいよ。

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