YUKI˚*






それからも



高校のときの思い出話とか


他愛もない話をして



二人で笑って




楽しかった



でも、少し


悠斗くんと話すと





思い出してしまう







「やっぱ雨止みそーにねーな、俺の傘貸すよ」



「え…いいよっ!近くのコンビニで買うよ!」



「そこまでに濡れるだろ、一応女なんだから体は気遣え」




「いいっ


「じゃーな」




乱暴に



折りたたみ傘だけをテーブルの上に残し



去って行く背中




その背中がどうしても




あの人に



見えてしまうなんて







ただ



久しぶりに



こんなに昔のことを思い出してしまった





ユリちゃんのために会ったんだ



ユリちゃんのために




だけど



傘なんて借りたら、返さないといけない



返しに行かないといけない




また、会わないといけない





……会いたくない







少しでも


もう



思い出したくない







それでもやっぱり



あのときと同じ




去って行くその背中を



ただ、見つめることしかできなくて




彼が店を出て、見えなくなっても



あたしはしばらくそのまま




一人窓側の席



そうしている間にも





雨はどんどん








思い出したくもない思い出が





どんどん



酷くなってゆく







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