紙ヒコーキとアオイくん
弓道少年との放課後
背筋をピンと伸ばした彼が、弓を構える。

普段から揺るぎないその瞳が、いっそう研ぎ澄まされる瞬間。まるで彼の周りだけ時が止まってしまったようだと、いつも思う。

一瞬の静止の後、弦を弾いた彼の手から、矢が放たれた。

それは見事、的の中心をするどく射る。


弓をおろした彼がふっと息を吐き出したそのタイミングで、あたしはパチパチと両手を叩いた。



「すごーいアオイくん!! それって『皆中』って言うんだよね??」



的に刺さっているのは、4本の矢。これをすべて、この彼が中てたのだ。

あたしの姿を認めたアオイくんが、それまでの鋭い眼差しから一転、端正な顔をどこか呆れたように歪める。



「春日先輩……また来たんですか?」



そんな彼の態度には、不本意ながらあたしはもう慣れっこで。

ぷうっと頬をふくらませながら、射場(縁側みたいな、矢を射るとこの名前。アオイくんに教えてもらった)のふちに腰掛けた。



「だってここでアオイくん以外の人、見たことないし。ひとりじゃ退屈でしょ~」

「別に退屈していないので、先輩はお気遣いなく自分の勉学に励んでいただいて結構です」

「むう~~」



相変わらずドライなその返答に、あたしはぶうたれる。

彼はそんなあたしのことなんかまるで気にしていない様子で、再度弓を構えた。
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