紙ヒコーキとアオイくん
とたん、ピリリと、彼の周りの空気が変わる。

──ああ、綺麗だなあ。

アオイくんの、何の迷いもない眼差しを斜め下から見上げながら、ぼんやりと思う。

彼の、矢を射る瞬間のとても真剣な横顔が、あたしは好きだ。



「──……ほんと飽きませんよね、春日先輩。世の高校2年生というのはそんなに暇なものなんですか?」

「ううううるさいなぁ」



一通り矢を放った後、床に腰をおろした彼に、やはり呆れたような表情と言葉を向けられてしまった。

あたしは勝手知ったるなんとやら。ローファーを脱いでいつものように射場のふちから投げ出した両足を、お行儀悪くプラプラさせている。

対するアオイくんは、ここは道場だしこの方が落ち着くからと、座るときはいつも正座だ。


なんだ、この敗北感。



「先輩、勉強しなくていいんですか? 来月はテストもあるでしょう」

「うぬぬ……あ、アオイくんだって、」

「俺は家で日頃から予習復習欠かしてないんで。春日先輩のご心配には及びません」

「ぐぬー……」



涼しい顔で学生の鑑のようなことを言い放つ彼に、あたしはぐっと押し黙った。


……なんだ、この敗北感んん~~!
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