紙ヒコーキとアオイくん
「俺のために、がんばってよ。春日先輩」

「っへ、」



思いもよらない彼のせりふに、あたしは盛大に動揺した。

そんなあたしの反応なんて気にも留めていない様子で、彼は続ける。



「先輩が成績伸びたら、俺もうれしいから。だから、勉強がんばって」

「え、あ、あの……」

「なに、なんか不満でもあんの?」

「あ、や、ないです……」

「うん」



あたしの返事を聞いて、アオイくんは満足げにまた笑った。

……彼の笑顔は経験上とても貴重だと認識しているから、あたしは今すごくイレギュラーな体験をしているのだろうけど。


…………あれ、でも待って、こんなんでいいの?

あたしの大真面目な悩みの解決法って、こんなんでいいの?



「先輩、よかったですね。これで勉強に身が入りますよ」

「え、あ、うん……?」



あたしは首をひねりながら、また無表情に戻って部活に専念し始めたアオイくんの横顔を、ぼんやりと見つめていた。
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