紙ヒコーキとアオイくん
「……いい名前だねぇ」

「は?」

「なんで隠してたの? なんかよっぽど、女の子みたいな名前なのかなぁとか、思ってた」

「………」

「『蒼井 宙』くんって、綺麗でかっこいいじゃん」



本当に嘘のない顔で、春日先輩はにっこり笑った。

その笑顔を見ていたら、なんだかうじうじしていた自分が、馬鹿みたいに思えてくる。

彼女とまっすぐに視線を合わせて、俺も笑った。



「……ッ、」

「先輩、こっち来てくださいよ」

「え?! だ、だめっ」

「なんで。何もしませんよ、ちょっとしか」

「ちょっとする気なんじゃん!」



そんな攻防を続けているうちに、じりじりと俺と先輩の距離は縮まっていて。

とん、と先輩の背中が壁についたところで、俺はようやく、床から立ち上がった。



「ほーら先輩、おとなしくしないから」

「……ッ、あ、アオイくんの、おばか!」

「………」



追いつめられた先輩から飛び出した苦し紛れの暴言に、俺は無表情を返すと。

ぺらっ

そんな間抜けな擬音でも聞こえてきそうな軽い調子で、彼女のスカートをめくった。



「!!? なななななっ、なにすんのっ!?」

「ムカついたから、つい」
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