紙ヒコーキとアオイくん
「うん、そー! ごめんねぇ、当てちゃって」

「……ずいぶん、飛ばない紙ヒコーキですね」



にこやかに笑うでもなく、かといって怒っているような表情でもなく。彼はこちらを見上げながらそう言った。

あたしはつい、あはは、と困ったように笑ってしまう。



「そーなの。その紙ヒコーキ、夢も希望も乗せてないからさー」



それからあたしは改めて、彼と視線を合わせた。



「その紙ヒコーキ、悪いけど捨ててもらっていいかな? 名前書いてるのとか気にしなくていいから」

「えっ、ちょ、由宇?」



そのあたしの言葉に、すぐさま反応を示したのは杏子で。

あたしはそんな彼女に向け、いーからいーからと片手を振る。



「どうせまた先生に紙もらえばいいんだし。……ほんとにごめんねー」

「……わかりました」



前半は隣りの杏子、後半は窓の外の少年へ。

あたしの言葉を聞いて、やはり表情は変えないまま、彼は小さく頷いた。

大したもめ事にならなくて、あたしは人知れずホッとする。
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