紙ヒコーキとアオイくん
かばんの他になんだかやたら細長い荷物を抱えたその少年は、ペコリと一度お辞儀をしてからどこかへと歩いて行った。

くせっ毛なのかパーマなのか、ふわふわとゆるく波打った黒髪が風に揺れている。



「ふー、危ない危ない」

「危ないじゃねぇわよ完全にアウトだったわよ今の」

「いだだだだだだ」



今度は背後から頭の両脇をげんこつでぐりぐりされ、あたしは悶える。

魔王様のお仕置きからようやく解放されてから、目の前の机に突っ伏した。



「あーあ、また小木ちゃんにしぼられちゃうよぉ。はああやだなぁ~~」

「……あんた成績はそう悪い方じゃないのに、そういうところで目つけられるわよ」

「うぬー」



《……この紙ヒコーキ、先輩のっすか?》



……あの男の子にも、悪いことしちゃったなぁ。

そんなことを思いながら、窓の外の空を見上げる。

青空の中の飛行機雲は、もうとっくに、消えていた。
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