Only One──君は特別な人──
あたしは貴広と竜くんのやりとりを黙って聞いていた。
口を挟めないような、そんな特有な雰囲気が漂っていたからだ。
「──あんた彼女に自分のことを紹介させるなんてセコイこと考えるな」
「事実を言ったまでです。オレはもえの彼氏ですから」
「あっそ」
「最近、もえに会いに来ましたよね?」
「それが、何? 人の女につきまとってるって警察にでも連れて行くつもりか?」
竜くんはふっと鼻で笑う。
「まぁ。警察に連れて行ってもあなたは懲りずに、もえに会いに来るでしょうね」
「ほー。オレのこと分かってるじゃん。だからあんたがここに来て直接『もえに手を出すな』って言っても無駄なんだよ」
予想通りの竜くんの反応だった。簡単に怯むようなそんな人じゃない。