Only One──君は特別な人──
つき合うことになったのは数時間前のこと。

でももうすでにあたしの心は大野さんでいっぱい。

もしかしたら、クリスマスの日に過ごしたあの夜、恋に落ちていたのかもしれない。

だから竜くんとのこともあっさりあきらめがついたのかもしれない。



「貴広…」


この時、初めて大野さんのことを名前で呼んだ。

ごく自然に名前が呼べた。


「何?」

貴広の優しい眼差しが少しだけ怖い。

いつかあたしへの想いが消えてしまったらどうしようと、不安になる。

あまりにも順調過ぎる展開に何か落とし穴がある気がしてしまう。


あたしはそんな不安を振り切るようにキスをしていた。

どうかどうか、貴広とうまくいきますように。


唇が離れてはどちらからともなくキスをする。

そんなことをしばらく繰り返していた。

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