砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「仕方あるまい。初夜の儀式には立会いが必要なのだ。父王の時代であれば、敵国の王女を娶ったときは寝台の脇にハーレムの宦官や侍女がついていたと聞いたな」

「横に……人がいるのですか?」

「そうだ。花嫁は人質か虜囚も同然。刃向かったときはすぐに取り押さえねばならん。自刃されても厄介なので、終始見張りがいたらしい」


サクル自身は常に人の目に晒されて日常生活を送ってきた。

初めて閨の手ほどきを受けたときも、数人の寡婦が一緒だった。

その後も複数で楽しむ、或いは、衛兵の監視下で女を抱くことは珍しくない。むしろ、完全に相手の女とふたりきりなどあり得ない事態だ。

しかしリーンは違うらしい。


「では……陛下のお母さまもそういった方だったのですか?」


リーンは悲しそうな声で聞いた。

彼女には、サクルの母、ヒュダは巫女(ミヤーフ)だとしか話していない。


「いや、母上は生まれたときから神殿に仕えた巫女だ。父上には母を娶る前に、すでに四人の王妃がいたが跡継ぎの王子がいなかった」

「カリム・アリーどのは?」

「カリムの母は異国から売られてきた奴隷だ」


リーンは息を飲んだ。


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