砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
熱い吐息が口腔内を駆け巡る。

リーンは舌をすぼめ、彼の舌に絡めるように応えた。そして彼女が溺れるようにしがみ付くと、サクルの口づけはさらに熱くなり……。


「サ……クルさま……わたし、わたしは」


唇の隙間からリーンの声が漏れる。


「どうした? 欲しいものがあるなら言ってみよ」


今宵のサクルは優し過ぎるほど優しい。リーンの背中をいたわるように擦り続ける。

いつもの奪うような愛撫ではなく、すべてがリーンのため、といった触れ方だった。


「サクルさま、そんなに優しくしないで……どうか、めちゃくちゃにしてください。わたしを抱いて……壊れるくらい激しく」


思えばこれまでも、サクルはリーンを壊れ物のように扱ってくれた。

激しい愛撫に翻弄されて我を忘れたことはあったが、苦痛を感じたことなど一度もない。最初のときでさえ、素晴らしい悦びを与えてくれた。


たとえサクルの心に愛はなくとも。

独占欲や執着心、リーンの身体に対する欲望だけだとしても。


満たされている自分に後ろめたさを感じてしまう。


「お願いです。どうか、わたしを……あ……あぁっ」


リーンの声が途切れる。

その瞬間、彼女は絨緞の上に組み伏せられていた。


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