砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「アミーン? おまえはアミーンではないか!? なぜ、このような場所にいる!?」


彼は日よけの黒いマントをすっぽりと被っている。それがアミーンを黒い物体に思わせた原因だ。

王と正妃を探してやって来たことに間違いはないだろう。

だが、この辺りを昼間移動することがいかに危険か、砂漠の部族出身であるアミーンが知らぬはずがない。

それを承知でここまで来る用とは……。


サクルの問いかけにアミーンは薄らを目を開け、


「へ……いか……よかった。これを……」


息も絶え絶えにつぶやくと、懐から月長石を取り出した。

それは手の平に収まる大きさで、伝えたい思いを石に籠めることで、文字にするより一層正確に伝わる。主に神殿で使われる手法だった。


月長石に触れた瞬間にわかった。

それがシャーヒーンからの伝言であることを。


「おまえはシャーヒーンの代わりにこの砂漠をやって来たのか? 愚か者め」


この位置であるなら、砂漠に降り注ぐ太陽の熱は、容赦なく人間の身体から水分を奪う。血が沸騰するような苦しみを味わったはずだ。

だが、すぐにリーンのもとに戻らねばならない。


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