愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
彼女は、「本来は自分が藤原の後継者であったのに、祖父が亡くなったばかりに、従兄に乗っ取られたんだ」そんな太一郎の言葉を信じたのだ。


彼女は罠に嵌められたことも知らず、自分の危機を救ってくれた太一郎を運命の人だと言う。さらには、身体の関係ができたことで“相思相愛”だと思い込んだ。

そして、太一郎は彼女の誤解を利用し、その身体を弄び続けた。


その関係に終止符が打たれたのは半年後のこと。

奈那子が妊娠し、それが親にばれたのだ。


桐生にすれば、たったひとりの売り物……いや、後継者である。疵物にされて、黙っているわけにはいかない。

当然、桐生の交渉相手は太一郎ではなく、藤原卓巳だった。


そんな中、奈那子は親元を抜け出し、太一郎に逢いに来る。「愛している。結婚したい。子供を産みたい」と言って聞かない。

だが、卓巳にこっ酷く叱られた太一郎は、耳触りのよい台詞で奈那子を追い払ったのだ。


「俺のために、今回は諦めてくれ。君が大学を卒業する前に、必ず迎えに行くから」 



奈那子に再会したのは四月末――ちょうど藤原本社が宗の事件で揺れていたころ。

夜の繁華街で男に手を掴まれ、ラブホテルに引き摺り込まれそうな女性を太一郎は助けた。その、小柄でやせ細った女性は太一郎を見るなり、泣きそうな声を上げたのだ。


「……太一郎さま……」


偽りの将来を約束し、子供まで堕ろさせながら……。

目の前にいる女性の名前を、すぐには思い出せない太一郎だった。 


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