愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
半年前、藤原邸で謝罪したとき、茜は同じ要求がしたかったという。だが、そのときは怖くて太一郎に近づくこともできなかった。

でも今なら……。

太一郎はうなずき、目を閉じた。

すると飛んできたのは、なんとグーのパンチだ。


「ちょ、ちょっと待て、俺はパーだったぞ」

「男と女なんだから、ハンデがあって当然でしょ! それに……私のファーストキスだったんだからっ!」

「……すみませんでした」


それを言われたらひと言も反論はできない。

殴られようが蹴られようが、一切文句を言う資格はないのだ。だが、茜は一発殴ってすっきりしたらしい。


太一郎が本気で謝っているから許してあげてもいい、と口にした。


「黙っておいてあげる。弱々しい太一郎を見るのってスッゴク楽しいし、なんて言うか、秘密を握った感じ?」

「呼び捨てかよ」

「じゃあ、トイレ掃除のおじさん、とどっちがいい?」

「――なんでも好きに言ってくれ」


茜の“赦し”は太一郎の心に射し込んだ光だった。

だがそれは、より一層、彼を苦難の道に導く光となったのである。 


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