愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(11)優しいキス
「汚くなんかないっ! カッコよかったよ、太一郎。ヒーローみたいだった」


茜の腕が、太一郎のウエストに巻き付いた。太一郎には身動きが取れない。

もし振り返れば……そのときは茜と正面から抱き合うことになるだろう。

かと言って、このままでもいられない。人に見られたら、どんな誤解を受けるかわからないのだ。

太一郎なら構わない。元々ろくな評判がない男である。

今さら、悪評のひとつやふたつ……だが、これ以上茜を巻き込めば、北脇にしても本当に手を引くかわかったものではない。


「……離せよ」

「ヤダ」

「お前、自分が何やってるかわかってんのか?」

「わかってる! 傍に……いてもいいって言ってよ」

「……」

「私、太一郎のこと嫌いじゃないよ。……好きかもしれない。現役の女子高生がカノジョになってやってもいいって言ってるんだからっ! なんとか言え、バカ太一郎!」


息が詰まった。


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