あの時とこれからの日常
「うっわ。ちょっと」
思わず頭に手をやると、途端に海斗の大きな手は離れていってしまう
けれど、離れる間際に乱れた髪をそっと整えるのを忘れない
「切ったんだ」
「気づいてたの」
帰宅した時に指摘がなかったからてっきり気が付いてないかと思った
見上げると見下ろしてくるのは、優しさを含んだ漆黒の瞳だ
「当たり前。毎日見てるのに気が付かないわけないだろう」
しかもこんなに短くなって
肩くらいで切りそろえられて、内側にゆるく巻かれた髪から香るのは、しるふの愛用しているカモミールの香りではない
「そか」
少しうれしさを覚えてはにかむ
合せるように海斗も口だけで笑う
「初めてだな、しるふがそこまで短いのを見るのは」
「そう、だね。海斗が長いの好きだと思ってたからさ」
「俺が?言ったか、そんなこと」
海斗の瞳が回想するように天井に移る
「言ったよ、覚えてるもん。…ん、違う、私が勝手にそう思っただけかも」
似合ってる、と言われたんだ
何気ない一言だっただろうけど、それがうれしくてずっと長いのを保っていたこの女心を理解してほしい
思わず頭に手をやると、途端に海斗の大きな手は離れていってしまう
けれど、離れる間際に乱れた髪をそっと整えるのを忘れない
「切ったんだ」
「気づいてたの」
帰宅した時に指摘がなかったからてっきり気が付いてないかと思った
見上げると見下ろしてくるのは、優しさを含んだ漆黒の瞳だ
「当たり前。毎日見てるのに気が付かないわけないだろう」
しかもこんなに短くなって
肩くらいで切りそろえられて、内側にゆるく巻かれた髪から香るのは、しるふの愛用しているカモミールの香りではない
「そか」
少しうれしさを覚えてはにかむ
合せるように海斗も口だけで笑う
「初めてだな、しるふがそこまで短いのを見るのは」
「そう、だね。海斗が長いの好きだと思ってたからさ」
「俺が?言ったか、そんなこと」
海斗の瞳が回想するように天井に移る
「言ったよ、覚えてるもん。…ん、違う、私が勝手にそう思っただけかも」
似合ってる、と言われたんだ
何気ない一言だっただろうけど、それがうれしくてずっと長いのを保っていたこの女心を理解してほしい