あの時とこれからの日常
「まあ、仮に言ったとして、覚えていながら切るっていうのは、反抗期の表れか」

からかい口調の海斗が、もう一度しるふの髪に触れる

「そー。いつもいつも振り回しれくれる海斗君への反抗心の表れ」

「そう」

区切りのようにポンポンと頭を叩かれ、海斗の温もりが離れていく

冷蔵庫へと向かう背に、そっと息をつく

もう少しコメントがあってもいいと思う

そんなに似合ってないとは思わないんだけどな

そっと短くなった髪に手をやる

「いいんじゃない」

かけられた声にふと顔を上げ、隣に腰を下ろした海斗を見つめる

と、

「だから短いのも、いいんじゃない」

ペットボトルのお茶を二つ分のカップに注ぎながらのそっけない言葉

でも心をあたたくするには十分だ

「…うん」

もう一度髪に手をやったのは、うれしくて思わず緩む口元を隠すため

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