あの時とこれからの日常
「はあ…」

抜けてきていいものなのだろうか

あとで黒崎病院、特に医院長にとばっちり、とか

ああ、でも海斗がそんなこと気にするわけないか

と少々失礼なことを考えているとふわりと視界が暗くなる

「……っ…!」

途端に抱き寄せられて重なる唇

「…ちょ!…海斗っ!!」

ぎゅっとつかんだ腕を押し返してできるほんの少しの距離

「酔ってる!?高いワインって悪酔いしないって言うけど!!」

至近距離で漆黒の瞳がふと細まる

「んなわけないだろう、ばか」

「…っ…!」

早口にそう言って、再び海斗が唇をふさぐ

今度はしっかりと後頭部を固定されて逃げようがない

重なる唇はいつもより荒っぽくて、でもどこか優しくて

「…っ。ど、どうしたの?何かあった?」

「別に」

そうつぶやく海斗の声は、いつもより低い

いや、何もないのに海斗がこんなに強引とかありえないから!!

「わ、わかった!社長令嬢に何か言われた?それともまた理不尽な迫られ方をされたとか!!」

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