あの時とこれからの日常
言いながらさりげなく腕から脱げだそうと試みる

「あ!それかお風呂入る?さっき沸かしたばっかだからまだ暖かいよ?」

行ってきなよ、ね?ね?

ほどきかけた腕は、ふと一瞬細められた瞳とともにしるふを抱き寄せる

「少し黙ってろ、しるふ」

一蹴され、三度目、海斗に唇をふさがれる

そのいつもにはない荒っぽさに、瞳をきつく閉じたまま、海斗のシャツをぎゅっと握る

でも、荒っぽかったのははじめだけで、徐々に優しさを含んできて

そっと手に込めた力を抜く

唇が離れて、一瞬、さざ波のような漆黒の瞳と視線が合う

ふっと息をつくしるふを

「…!ちょ、ちょっと!!海斗!」

ひょいと軽く抱き上げる

じたばたとせめてもの抵抗をみせると

「落とすぞ」

さらっと低い声が響く

「いや、落とされるのは困るけど!!ってそうじゃなくて!落ち着こうよ、海斗君!」

「いたって冷静」
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