あの時とこれからの日常
ドイツ留学を終えて帰国した3月

そのまま副医院長就任と婚約(結婚)発表をして医療界に衝撃を走らせた

喜びに沸いたのは黒崎病院のみ

海斗に特定の女がいることすら知らなかった病院では、衝撃とともに落胆も走ったようだ

正式に就任したのは4月からだったし、それまでは結婚式やら無理やり飛ばされた新婚旅行やらでERに顔を出すこともない日が多かった

そのため衝撃を受けたさまざまなご令嬢やその父親たちのとばっちりを受けたのは信次だ

何度聞かれようとも海斗が結婚することに変わりはない、と医院長室のドアに張っておこうかと思ったほどだ

それか電話線を抜くか

4月になって一応ERを離れた海斗だが、しるふはまだERにいてしかも「立花」と呼ばれているためにこっそりと副医院長夫人を偵察に来ても見つけることは叶わなかったのだろう

副医院長就任祝宴会といい形でそのお披露目をさせようというのだ

そんな見え透いた思惑に乗ってやるほどかわいい女じゃないというのに

伸びきった鼻を折られるのは、あちらだろう

「ただいまー」

久々に海斗の方が早く帰れて、夕食を作っていたらドアの空く音とともにしるふのリラックスした声が響いた

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