あの時とこれからの日常

「海斗、言い過ぎだよ」

ずっと隣で海斗の辛辣な言葉と口調を聞いていたしるふは、少しも驚いた様子もなく、静かにつぶやく

「いいんだよ。人の地雷踏み荒らしておいて。荒療治っていうのも伸びきった鼻を折るって言う観点からするとありだしな」

一瞬にしてそれまでの触れたら痛そうな雰囲気をなくして、いつも通りの静かな瞳に戻る

その変わり身の早さにしるふは小さく苦笑する

こういうところはさすが、ずっと荒波にさらされてきただけはある

自分ももっと強くならなければ

決めたのだから

海斗のそばにいると

胸を張って、隣を歩くと

そう、決めたのだから

「海斗」

伏せられた瞳は凄く澄んでいて、何にも染まらないことをずっと願っている

たとえ自分のそばにいることで逆風にさらされても、その瞳にだけは哀しい色は映させない

ずっとずっと笑顔でいてくれるように

守っていくと決めたのだ

「…ありがとう」

小さいつぶやきに海斗が口元だけで笑う気配がする

守ってくれているのを痛いほど感じるから、私もそれに応えようと思う

守られるためだけに海斗のそばにいるわけではないのだから