あの時とこれからの日常
ただ、以前のように医局にいけばしるふに逢えるという日常ではなく、

あの住み慣れたマンションに帰ればしるふと祈が待っていてくれる

そんな今の生活も悪くないと思う

いつまでもあの状態でいることなどできなかったのだから変わらなければならないのは自分たちなのだろう

離れていても思いやれる、知らない相手の時間を気遣える、そんな気づきが多分必要なのだ

ずっと先の未来を共に見たいと願ったのは自分たちなのだから

「寝るなら仮眠室に行けよ」

ここで寝られると迷惑だ

寝むけに負けて下がり始めたしるふの頭を少々乱暴に撫でながら起こす

「ん、ここじゃ体が冷えておなかの子に悪いから心配だってどうして言えないかな」

本当に素直じゃないって言うか、口が悪いって言うか

「しるふがそれをわかってるなら問題ないだろう。いちいち言う必要もない」

「ホント、そういうところ誤解を招きやすい…」

きっとしるふが仮眠室に行くのを見届けるまではここを動かいないであろう海斗のためにしるふは重い瞼をこすりながら立ち上がる

ふぁあ、と欠伸をしながら階段を上っていくと

「立花先生!?」

どうしたんですか!!

丁度医局から出てきた園田が血相を変えて駆け寄ってくる

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